decobisu記

適当な日々のやっていき

シリコンバレーにいってきた(前半)

おひさしぶりです.

今年3月に開催されたJTPAによるシリコンバレーカンファレンス2011(SVC2011)にあわせて3月9日〜16日の約一週間,カリフォルニアに滞在して企業を回ったり観光したりしてきました.
もう帰国してだいぶ経ってるので忘れてる人も多いのではないかと思います.書いては消し,書いては直しを続け,吐き出すのに時間がかかってしまいました.シリコンバレーについては多くの方が色んな事をそれぞれ書いてるので*1,僕が見たままの世界を感じたまま書いていきたいと思います.
ビールでも飲みながらゆっくり読んで下さい.

「出発前」

旅立つ前に,シリコンバレーに行く理由としてはっきりとしたものは持っていませんでした*2
梅田望夫さんの著書を読んだり,Googleのオフィス行ってみたいなーとか「マジで行ったほうがいいよ!」という過去の参加者の方々の熱い話やid:hxmasakiさんの記事*3を読んで興味を持っていたぐらい.
しかし,行く前に何も決めていかないというのも不安だったので行く前に旅の目標を一応立ててみました

  • 向こうの人を笑わせる
  • 何事も楽しむ
  • 何か約束する

すごい曖昧ですね.一応目標です.なんというか適当すぎたとは思いますが,それぞれに思うところがあったのでこの3つを持って行きました.


今回の旅はFacebookの参加者グループで同行者を募集し,Google group,docやSkypeで予定を共有して旅程を練る,という形で事前の段取りを行いました.
これらのサービスは普段はそれほどガッツリ使ってなかったのですが,予定の共有機能にとても助けられました.
僕はフライトを予約したのも遅くて,旅程計画の段階で参加人数が締め切られた訪問もありどこにも行けないのでは?と焦って色々アポを取ろうと動いたりしていました.なんやかんやで予定はいつまにかガッツリと詰まっていきました.
新しくバックパックを購入し,ありったけの妄想をかき集めて荷物を詰めていく.気付けばもう出発当日.夜はいつのまにか明けていました.

初日「Webの向こうに見ていた場所」

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まずは高速バスで関西国際空港へ.出国手続きを済ましサンフランシスコ行きの飛行機に急ぐように飛び乗りました.
機内では隣でピカード艦長似な人がCAのお姉さんとギャーギャー言っててうるさい.それがなくとも,向こうでの事を思いながら不安と興奮で飛行機の中でずっともやもやとして寝れませんでした.

着いたら着いたで税関です.職員の方はイケメンで体も大きくK1選手のようで変に答えたらどうしようと恐怖におびえましたが,特に問題なく入国.その後ロビーで同行者の2人と合流してレンタカーを借りに行く.見知った声と姿にほぐれる緊張.
今回の旅では僕は国内免許すら持っておらず,運転は他の人に任せきりになってしまった.各訪問先への行けたのはドライバーの皆さまのおかげです.本当にありがとうございました!



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車に乗ってまずは今日の宿へ.フリーウェイは実際乗ると思った以上に広くて大きく感じます.路肩の背は低く,はしの舗装も雑で周りの景色が広々と見える.走っていると有名企業のビルやサービスの看板がどんどん視界に入ってきて皆で興奮しました.
車の文化については歩行者が道を渡ろうとする際も必ずと言って良いほど停止してくれ,"止まれ"の位置では皆しっかりと停車してました.日本はどちらかと言うと信号のない所は車優先.この違いは交通環境の違いなんだろうか?「人には優しいけど車同士はそうでもないねー」という話を後から現地在住の方に聞いたりもしました.
この日はホテルにチェックイン後,昼食がてらスタンフォード大学へ.
ホテルには人懐っこい猫さんがいました.
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「ギブミーサーモン」



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話に聞いていたようにスタンフォードは広大で,学内には歴史を感じさせる建物と柔らかな芝生が広がっていました.
ご飯食べれる場所を探していたらイケメンな学生がわざわざ案内してくれた.さすがスタンフォード,イケメンな学生も多いですね.
昼食は学内のサブウェイへ.学内のサブウェイで陽気な兄ちゃんがYeah,Yeah言いながらサンドイッチ作っていてとても楽しそうな雰囲気です.外のテーブルで食べてたらセグウェイで走る人を発見.広大な学内の移動手段は徒歩,自転車,スケートボード,キックボード,セグウェイと色々.年齢も人種も様々です.
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こっちで食べる初ジャンクフードとなったサブウェイのサンドイッチ.写真は微妙ですがピクルスがいい感じで美味しかったです.
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だらだらと歩きながらデザイン系の学科によってみました.外のベンチで座ってペーパークラフト作ってたり,一体何なのかよくわからないもの組み立ててたり.中の教室では金属磨いてたりレーザー加工してたりとMakeな世界が広がっていて混ざりたい欲求にかられました.なんでも作れるを地で行く立派な施設.そして何より自由な感じの空気.


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この日は最後にスーパーに行って買い物をして終了.ここも話には聞いていたけどその目で見ると食料品のサイズ,量に驚く.ディスプレイされているコーラ全部で何Lあるのだろうか.

初日はこの国の大きさをひたすら感じていました.人も,モノも,アメリカはデカい.そう僕はいまアメリカ,Webの向こうに思っていたあのシリコンバレーにいるのだ.


二日目「SVという土地、そして」

朝の日差しで目が覚めました.話に聞いたカリフォルニアサンシャイン.
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綿毛さん「SVじゃ日常茶飯事だぜ」
涼しげにそよぐ風,暖かく照りつける太陽,柔らかな芝生の感触.この気候に惚れる人が多いと聞いていましたが,ほんとに気持ちいいものでした.


午前は“シリコンバレー発祥の地 (Birthplace of Silicon Valley)”と呼ばれるHPのガレージと,昨日行ってなかったスタンフォードの大学ショップに向かいました.
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HPガレージは住宅街の中,一軒の家の横を奥に入った所にありました.周りには似たようなガレージも沢山あって「そこじゃなくて隣だよ」と言われても分からないような場所.違いは家の前に標識が立てられているぐらい.
ここからシリコンバレーは始まったらしい.今もどこかのガレージで新しい企業が生み出されているのかも…と思うと胸が熱くなりますね.

2回目のスタンフォードでは広々とした芝生で朝の空気を吸う.

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男3人,裸足で芝生の上で軽くダラダラする.芝生はしっとりと湿っていて微妙にニチャニチャ.気持ちいい空気です.

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スタンフォードの大学ショップは中にカフェもあり書籍はもちろんIT機器や土産物も豊富.残念ながらスタンフォードロゴ入りの赤い女性用パンツは見当たりませんでした*4


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チームメンバーと駅で合流しこの日最初はPlug and Play Tech Center(P&P)という施設と入居している株式会社サンブリッジを訪問しました.

P&Pはインキュベーション施設としてベンチャー,大学,政府,また多くの国々やコミュニティが関わっておりその範囲の広さに驚きました.入り口には今までオフィスに入居していた,また現在入居中の主な企業のロゴや各国の国旗がずらりと並んでいます.
中にはそれぞれに小さなブースが設けてあって壁で仕切られている.ブースは安く借りれて要望に合わせて広げたり出来るそうです.知っている企業の中では色んなブースに混じってLunascapeのブースがあっておぉと思った.

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中でもSVっぽいと思った物の一つがこれ.なんでもCEOやCFO等の求職広告らしく,入居してるベンチャーはこれを見てパートナー探したり見つけたり出来るとのこと.人材の流動性の幅広さに驚きました.その他にも広いイベントスペースがあり,センターの入り口のディスプレイにはイベントカレンダーが表示されていて入居中のベンチャーやVC向けのイベントが数多く企画されています.

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Japan Pavilionの一角にあるサンブリッジのブースには和の小物が所々に置いてあって日本を強く意識させる感じになっていました.
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ここは共有スペースになっていて「これは幸運を呼ぶソファーで、ここに座ると成功すると言われてます!」と聞きちゃっかりと座らせてもらう.座り心地はいい感じです.

その後はサンブリッジCEOのアレンさんからのお話.お決まりのように「なぜ皆さんまだ起業してないんですか?」から始まり話題は自らの経験や,日本とSVそれぞれの環境について.
話の内容全部まとめるとすごい量になるので印象に残った一言をつらつらと並べてみます.「日本語は19〜20歳の時に日本にモルモン教の布教に行く時に覚えた」「Oracleに居た時,"50人のバカとランチを食べたい"と思った.クリエイティビティを知りたくてサンブリッジを設立した」「成功の為には,賢く,正しく,日本でも負けないこと,そして何より"情熱"があること」と,熱くなってきた所で次の訪問場所へ移動.

P&Pを出た後はフリーウェイを走りOracleへ.
Oracleでかい!かっこいいビル群がドドドンと立っています.「ここだと本社ビルが全部入る」という撮影スポットにOracleの小野さんに案内してもらいました.
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ということで集合写真!

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オフィスからの風景は周りに高いビルはなく眺めがとても良いです.社員それぞれに個室スペースがあり,ドリンクも好きに飲めるらしくお言葉に甘えドクターペッパーを頂きました.

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社内にはスポーツセンターがあり体育館やジム、外にはテニスコートやプールもありビーチバレーも出来る.訪問した時は結構な人数が自由に何かしらしていて汗を流していました.各個人が仕事に専念出来る環境と,スポーツセンターなど社員用施設の充実度はさすがの大企業です.他の日本人社員について尋ねると,社内には日本人も何十人かいるけど全員知ってるわけではないと.社員数としては中国,インド系の人が割合的に一番多いらしい.


そして夜は美味しい中華料理のお店に連れていって頂けることに.
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美味しい!「色んな国の料理店があるけど,その国の移民がやってる店は大体おいしいよ」とのこと.確かに向こうで食べたモノの中ではとても美味しかったです.
Oracleの皆さんには大企業での経験,シリコンバレーでのライフスタイルについて質問しました.こっちは子供の学費が高いとか給料もいいし持ち株もかなりの額あるんだけどねw…といった話からこちらで働くことになった経緯など.「スーパーエンジニアとかそういうのではないけど世界一の設計をしているしそう言われたらそうだ」といった言葉も聴かせていただきました.

この日は濃厚なインキュベーション施設,大企業という2つの違った所を訪問.どちらもその環境レベルの高さ,世界を変えるものを作るその現場にいる感覚に圧倒されていました.うおーシリコンバレーすげー
"百聞は一見にしかず".見て初めてこういう世界がここにあるのだと,今までの認識が書き換えられていく瞬間に興奮し続けていました.


それを一気に冷めさせる事実を知るのはその夜のこと.
宿に戻ってTwitterを開くと飛び交うさまざまな情報.
東北地方太平洋沖地震。アメリカでもTVをつけると延々と続く速報.
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SVC参加者で直前に出発する予定だった方々は空港で足止めを受けたり,来れなくなったことも知る.
自分の家族は関西なので無事でしたが,情報が気になって見ないではいられない.押し寄せる津波が燃えさかる家を押し流しながら平野を走る映像に言葉を失う….
ネットワークは生きている.上がっていた熱は奪われ,居心地の悪い寒さを感じながら夜遅くまでずっと情報を追っていました.

三日目「あなたは何を?」

三日目が始まりました.
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昨日の夜の衝撃から抜けきれない気分.それでもカリフォルニアの空は気持ちよく晴れていた.
出かける時に宿の方にすごい心配されたり,朝食を食べる時もずっとTVは地震報道をしていてほんとにやばいんだなとアメリカにいて余計に強く思いました.

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この日はまずEvernoteに訪問.オフィスはガラスばりで,外の天気も良く気持ちよかったです.
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英語での会話に自分の英語力の低さを悔しく思いながらも話を聴く.Evernoteが目指すのはユーザにとっての第2の脳.こっちで売り込むなら「アイデア,そして何が出来るか.サクセスストーリーが必要だよ」とマーケティングのアンドリューさん.日本人の近藤さんは「インターネットするならSVじゃん!」という事で自らEvernoteに来た時に自分を売り込んだらしい.すごい行動力だと思う.


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その後はnVIDIAに.
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nVIDIAも本社ビルは大きく広いです.訪問では最新のTegra等のグラフィックチップの内容から今後の展開,ハードの設計・制作ラボなど見せていただきました.
巨大なサーバルームの隣を通り,大型機械による実際のチップの制作過程の紹介を受けながらプロトタイプをもらったりとその巨大な社内をぐるぐると巡る.

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最後は3Dテレビやリアルタイムの物理演算デモを実際に見せていただいたりとnVIDIAのチップによる最新技術を見せていただきました.
結構疲れてきてあまり質問出来てなかったです.


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その後はGlobal Catalyst Partnersを訪問.Oracle周辺を一望出来る眺めの中,夕食をいただきながらGCPの大澤さんと懇談会.ピザをモグモグといただきながら「明日も話さなきゃいけないしなぁー何話そうか」と言いながらも,細かな質問にも答えて下さる大澤さん.色々な話を聞かせていただきました.
「VCやってて楽しいことは10%ぐらいかな。90%は楽しくないねぇ」「新しいこと勉強したかったらアントレの話を聞いたり中学生に聞けばいいよ.中学生の娘がいるんだけど全然価値観が違うんだ」「若い頃はドブ板踏めるしね.かっこよくないことしてると後々分かるものがある」などなど.とてもフランクに話してくださいました.


終わった後,この日はそのまま宿に帰った.震災に気持ちを奪われ続けている気もするし,連日の移動で体も疲れ初めていました.
そして,明日はカンファレンス.訪問の合間に出会った人,会ってない人たちも一同に会する場所です.
一緒に来ている人たちの求めるモノ考えているモノ,出会う人達のレベルの高さをこっちに来てから,…というか来る前からずっと感じていました.
自分はいったい何を求めているんだろうか.ただ知りたいだけで突っ込んでみた旅の中で,魅力的な世界に舞い上がりながらも,地震に心を揺さぶられた.具体的な何かを持ってない自分に悔しさを感じ悩みました.
もやもやした葛藤とカンファレンスへの期待を胸に,この日も夜は早々と過ぎていきました.


後半へ続きます

*1:[http://d.hatena.ne.jp/nokuno/20110405/1301964637:title]

*2:前の記事 [http://d.hatena.ne.jp/decobisu/20110309/1299659431:title]

*3:[http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090714/333776/:title] ※追記 id間違えていました.hxmasakiさん申し訳ない

*4:映画social networkのワンシーンより